受験生はなぜ「時間切れ」になるのか?

受験生のほとんどは「受験勉強を始める時期が遅かった」と嘆く

 年度始め(あるいは1学期中)に、「進路指導資料」として前年度の先輩方の受験結果をまとめた冊子が配られる学校が多いと思います。「○○大学には46名が受験し、うち23名が合格、16名が進学」などというデータが列挙してあったり、「合格体験記」などが載っているアレのことです。

 そして多くの後輩(諸君のこと)は、配られたときにパラパラめくるものの、気づけばロッカーの奥底に眠らせて、面談の時に持ってくるよう担任に言われ「あれどこやったっけ?」などと言っているのではないでしょうか。

  長い受験生活が終わり、ようやく卒業の日を迎えたにも関わらず「受験体験記」だの「受験アンケート」だのと強制(!)され、それに快く(?)回答してくれた先輩方の名誉のためにも言っておきますが、この「進路指導資料」は参考になる部分は非常に多い(もちろん統計的な意味では、蛍雪時代に載っているような統計資料には遠く及びませんが)ので、すぐ取り出せる場所に置いておき、適宜参照するとよいと思います。

 さて本題はここからです。その「進路指導資料」には、よく「受験アンケート」が掲載されています。その中には「いつから受験勉強を始めましたか。そしてその時期は自分にとって早かったですか。ちょうどよかったですか。それとも遅かったですか。」という「定番の」質問項目があります。

 すると、受験勉強を始めた時期についてはバラつきがあるものの、ほとんどの受験生が「(受験勉強を始めた時期が)遅かった」と回答しているのです。もちろん、その中には部活動の引退が高3の秋になり、文字通り受験勉強開始が遅くなった、という受験生もいると思いますが、例えば「高3の4月から始めた」「高2の2学期から始めた」という層でも、やはり「遅かった」と回答しているのです。

 

受験勉強は、早く始めた方が有利!のはずなのに…

 話は変わって、高校12年生から寄せられる質問の1つに「受験勉強っていつから始めればいいですか?」というものがあります。結論を先に言ってしまえば「できるだけ早く」に決まっています

 そりゃそうですよね。受験は「試験日=締め切り」が決まっています。「自分だけ1か月後にして」などというワガママは通用しません。そして 「この日から受験勉強を始めてもいいですよというタイミング=解禁日」も存在しません。ならば、いち早く受験勉強を始めた生徒が有利になるのは当たり前だと思いませんか。

 もちろん、勉強の「質」によっていくらでも逆転は起こり得るでしょうが、受験生の能力は(一部の天才を除いて)皆似たようなものなので、早く始めた方が有利という原則は変わりません。例えば100m競走で、相手はスタート位置から30m進んだ所からスタートすると考えてみて下さい。自分がウサイン・ボルト選手のような「天才」であれば別ですが、同じような走力の人間ならまず追いつくことは出来ません。

 と、 ここまで話せば多くの生徒は納得してくれます。そして、その中の一握りの生徒は、実際に受験勉強を始めてくれます。受験勉強を始めるのは早い方が有利であるならば、勉強開始時期が早ければ早いほど「(受験勉強を始めた時期は)ちょうどよかった」や「早かった」の回答が増えるはずです。しかし、前述のとおり最終的にはほとんどの受験生が「遅かった」と回答するのです。これはいったいどういうことなのでしょうか。

 実は、この一見矛盾する事実にはある「カラクリ」が存在します。そして、その「カラクリ」を理解している生徒は、本格的な受験勉強を始める前からコツコツと「準備」を進め、多くの受験生が「時間が足りない」とヒーヒー言っているのを横目に見ながら、余裕をもって計画通りの受験勉強を終え、飄々(ひょうひょう)と志望校に合格していくのです。では、その「カラクリ」とは何なのでしょうか。続きは次回にしますが、次回までひっぱるほど特別なことではなく、実に当たり前のことだということは先に言っておきます。

(次回に続く)

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